Research

研究概要


           活性ラジカルとの反応により発せられる光

水に高出力の超音波を照射するとμmサイズからなるバブル(マイクロバブル)を多数発生させることができます。このように生成されたバブルは超音波の音圧変化で断熱圧縮崩壊されやすく、その結果、バブル内の温度が数千度以上、圧力が数百気圧以上に達します。さらに、衝撃波やマイクロジェット流などのメカニカルな効果も発生します。

このような特異なバブルを化学反応の場として利用する研究が活発に進められていますが、μ~m秒でのバブルの生成・消滅や、生成されるバブルの数、温度や圧力が正確にわかっていないことから、反応場の特徴やそこで進行する化学反応に対して定量的な議論ができていないのが現状です。そこで当研究グループでは、超音波照射により生成されるバブルを水浄化技術、金属ナノ粒子合成技術、バイオマス関連技術等に応用する研究を進めるとともに、バブルからなる反応場の特性をより定量的に明らかにするためにバブルの温度や圧力の測定について検討しています。

 

超音波を利用する水浄化技術と金属ナノ粒子合成技術の概要を以下に示します。


1.水浄化技術(有害有機化合物の分解・無害化)

有害有機化合物による環境汚染が問題となっており、それらの分解・無害化技術を開発することは重要です。例えば水の中に含まれる有害有機化合物の分解技術として、促進酸化法(OHラジカルを利用する酸化分解法)が世界中で活発に研究されていますが、促進酸化法でも容易に分解処理できない難分解性有機化合物(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸などの有機フッ素化合物)も存在し、新たな分解技術の開発が望まれています。当研究グループでは、水中に存在している難分解性有害有機化合物の超音波分解技術を開発するために、どのような物性の有機化合物が分解されやすいのかについて調べることを行っています。その結果、疎水性の高い溶質(logPの大きい物質)は泡のまわりに集まり、そこでOHラジカルによる分解と熱分解が起こることがわかりました。

これまで、有機フッ素化合物、有機塩素化合物、有機酸(脂肪酸も含む)、アゾ染料、界面活性剤、アルコール等を分解対象物質に選び、分解機構と速度論の解析を行うと共にバブルの物理化学的性質の解析について検討しています。さらに分解促進方法の探索として、添加剤(粉末、塩や有機物)の影響や混合ガスの影響についても検討を行っています。

2.金属ナノ粒子合成技術

優れた触媒能を有する金属ナノ粒子は、省資源、省エネならびに環境問題の解決に貢献できるため、新たな金属ナノ粒子合成技術を開発することは重要な課題です。通常、反応性の高い有害な試薬(例えば、NaBH4やヒドラジンなど)を添加して金属イオンを還元し金属ナノ粒子を合成することが多いです。当研究グループでは、水の中で生成される高温高圧バブルを利用して、特別な還元試薬を含まない系で金属イオンを還元し、金属ナノ粒子を合成する技術を開発しています。毒性のほとんど無い有機物を反応系に極微量添加することで、様々な還元能を有するラジカルや還元種を発生させ、金属イオンの還元速度の制御や生成される金属ナノ粒子の粒径や形状の制御を行っています。還元反応やナノ粒子生成機構の解析と、得られた結果を基にバブルの物理化学的性質の解析についても検討しています。従来の化学的手法よりも、環境負荷をあたえず、優れた合成法(粒径制御が簡単で、再現性が良く、低コストの方法)の確立を目指して研究を行っています。

超音波還元法を用いるMnO₂ナノ材料の形状制御合成(pHの影響) Abulizi教授との共同研究

 

代表的な論文の概要を以下に示します。


Formation of NO2 and NO3 in the sonolysis of water: temperature- and pressure-dependent reactions in collapsing air bubbles

Kenji Okitsu, Yasuyuki Itano

ーChemical Engineering Journal, 427 (2022) 131517.ー

<概要>

バブル内の高温と高圧がもたらす化学作用を解析するために、空気溶存水に200kHz超音波を照射し、バブル内で起こる窒素の酸化反応を解析した。特に、主生成物であるNO3とNO2の量を解析した。その結果、NO3とNO2の初期生成速度の和(= NO3 + NO2)とその比(=NO3/NO2)は、超音波出力に対して異なる依存性を示すことが確認された。また断熱圧縮式から、バブル圧力の増加率がバブル温度の増加率よりも大きいことが確認され、バブル内で起こる化学反応はバブル圧力の影響を受ける可能性が示唆された。そこで、NO3とNO2の前駆体であるNO2とNOの生成に及ぼす温度と圧力の影響を化学平衡解析ソフトウエアでシミュレーションし、NO3/NO2に対して特異な超音波出力依存性が観察された理由について考察した。その結果、NO2は温度が高いほど生成されやすく、NO3は圧力が高いほど生成されやすいことが示唆された。すなわち、NO2とNO3の生成は温度や圧力に依存する反応のプローブとして、高温高圧バブルの解析に有用と考えられた。バブル内での反応を速度論解析する時には圧力の影響も考慮する必要があることが示唆された。

 


Mechanism for sonochemical reduction of Au(III) in aqueous butanol solution under Ar based on the analysis of gaseous and water-soluble products

Kenji Okitsua,, Itsuya Kurisaka, Ben Nanzai, Norimichi Takenaka, Hiroshi Bandow

ーUltrason. Sonochem., 69, 105241 (2020)ー

a) Au(III)を含まない1-ブタノール水溶液に超音波照射した時の主生成物の生成速度. b) Au(III)還元に対する還元種の寄与率

<概要>

超音波照射によって生成される還元種の反応性について考察するために、1-ブタノールの分解から生成されるガス状および水溶性化合物(CH4、C2H6、C2H4、C2H2、CO、CO2、H2、H2O2、アルデヒド)の生成速度に及ぼすAu(III)の影響について調べた。その結果、次の5つのことがわかった。1) Au(III)還元に対する還元種の種類が1-ブタノールの濃度によって変化すること、2) 熱分解生成物であるCOと·CH3が還元剤として働くこと、3) 1-ブタノールの熱分解によって生成された·Rpyの方が引き抜き反応によって生成された·Rabよりも還元寄与率が大きいこと、4) 1-ブタノール存在下では·Hの還元への寄与は考えなくて良いこと、5) アルデヒドとH2は還元剤として働かないこと。図に1-ブタノールの分解生成物の生成速度とAu(III)還元に対する還元種の寄与率を示す。COが主還元種であることがわかった。

 

 

 

 

 

 


Synthesis of Au nanorods via autocatalytic growth of Au seeds formed by sonochemical reduction of Au(I): Relation between formation rate and characteristic of Au nanorods

K. Okitsu, S. Semboshi

ーUltrason. Sonochem., 69, 105229 (2020)ー

<概要>

アルゴン雰囲気下でヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、AgNO3、アスコルビン酸 (AA)の存在下でAuイオンを超音波還元することにより、Auナノロッドをワンポットで合成することができる(Okitsu et al. 2009, Okitsu and Nunota 2014)。本研究では、HAuCl4,AgNO3,AA濃度の影響を調べた。また、最適化された条件下で超音波出力と照射時間の影響についても検討した。さらに、UV-Vis分光法を用いて400nmでのAuプラズモン吸収の吸光度(Au金属のモル吸光係数2.4 mM-1 cm-1)をモニターすることで、Auナノロッドの生成速度を分析し、AuシードからAuナノロッドへの成長挙動を考察した。AuシードとAuナノロッドの生成を効率的に行うためには、HAuCl4とAAの濃度バランスが重要であることが確認された。Auナノロッド生成速度はAA濃度の増加に伴い速くなり、AA濃度が高い場合にはドッグボーン型のナノロッドが生成された。また、Auシード生成のために短時間の超音波照射を行った場合、Au(I)の還元が完了した後もAuナノロッドの形状が変化するというユニークな現象が確認された。超音波還元法では、短時間の超音波照射によって生成されるAuシードの自己触媒成長を利用して粒子成長を行うことができるため、Auナノロッド合成において本法は低コスト、省エネの技術と考えられる。

左) 60秒照射した試料溶液を放置したときの放置時間にともなう吸収スペクトルの変化.
中央) 60秒照射した試料溶液を放置したときの放置時間にともなう400nmでの吸光度の変化.
   HAuCl4濃度の影響. (◇); 0.40 mM, (□); 0.20 mM, (○); 0.13 mM.
右)金ナノロッドのTEM像と電子線回折像

 


Sonochemistry of aqueous NaAuCl4 solutions with C3–C6 alcohols under a noble gas atmosphere

Kenji Okitsu, Itsuya Kurisaka, Ben Nanzai, Norimichi Takenaka, Hiroshi Bandow

ーUltrason. Sonochem., 41, 397-403 (2018)ー

<概要>

ガス溶解度と各種反応速度の関係

Au(III)の超音波還元メカニズムを明らかにするために、アルコール水溶液中でAu(III)を超音波還元した時の、Au(III)還元速度と生成されるガス状物質の生成速度、アルコールの分解速度の解析を行った。特に後者二つの速度の分析はこれまで検討例のない新しい試みである。図に1.0 mM 1-ヘキサノールを含む各貴ガス雰囲気下の水溶液系でAu(III)還元を行った時の貴ガスのガス溶解度とAu(III)還元速度、1-ヘキサノール分解速度、ガス状物質の生成速度の関係を示す。ここで1.0 mMと低濃度で実験しているのは、1-ヘキサノールや分解生成物がキャビテーションバブルに及ぼす影響をできるだけ少なくするためである。図より、これらの速度は溶液中の溶存ガス量に影響を受けることと、溶存ガス量は高温バブルの生成数に影響すること、Au(III)の還元と1-ヘキサノールの分解の間で因果関係があることがわかった。ここで1-ヘキサノールの蒸気圧が極めて低いことから、バブル内での反応でなく界面反応と仮定できると提案した。その結果、ガス状物質であるC2H6、C2H4、C2H2の生成量の速度論解析の結果から、高温高圧バブルの界面領域の温度は3900~4200 Kと見積もられた。

 


Mechanism of sonochemical reduction of permanganate to manganese dioxide in aqueous alcohol solutions: reactivities of reducing species formed by alcohol sonolysis

Kenji Okitsu, Masaki Iwatani, Koji Okano, Md. Helal Uddin, Rokuro Nishimura

ーUltrason. Sonochem., 31, 456-462(2016)ー

<概要>

還元種 (H2O2·H、·Rab·Rpy) が MnO4 の還元に与える寄与率. 

MnO2ナノ粒子の合成に対して、アルコール水溶液中でのMnO4の超音波還元について検討した。アルゴン雰囲気下でのMnO4還元速度は、添加されるアルコールの濃度や種類によって大きく変化することがわかった。特に興味深い現象として、MnO4還元速度はアルコール濃度の増加によって減少するが、さらなるアルコール濃度の増加によって還元速度が速くなることが明らかとなった。すなわち、あるアルコール濃度 (Cvalley) で最小速度をとることが観察された。この現象はこれまでの貴金属イオンの超音波還元では認められなかった新しい現象であった。この現象を解析した結果、Cvalleyを境に、各種還元種 (H2O2·H、·Rab·Rpy) がMnO4の還元に与える寄与率が図のように変化することが明らかとなった。

 

 

MnO4を含む1-ブタノール水溶液(0、0.50、1.0、3.0、5.0 mM)に超音波照射した時の360 nmでの吸光度の変化

さらに超音波照射を続けるとMnO2がMn2+に還元されることがわかった。図に0.1 mM MnO4水溶液に超音波照射した時の照射時間に伴う360 nmの吸光度(= MnO2生成量の指標)の変化を示す。図より、MnO4からMnO2への生成挙動(=吸光度が上昇している挙動)とMnO2からMn2+への還元挙動(=吸光度が減少している挙動)が照射時間と1-ブタノール濃度の影響をうけることがわかった。特に興味深かったのは、1-ブタノールを添加するとMnO2からMn2+への還元速度が無添加時と比べて遅くなったことである。これは、1-ブタノールの添加によって還元剤であるH2O2の生成が抑制されたことと、1-ブタノールの分解から生成される·Rab·RpyがMnO2の還元にほとんど寄与できないことが原因と考えられた。以上の結果から、MnO2を高収率で得るためには、アルコールなどの有機物を共存させることによってH2O2生成を抑制することと、適切な超音波照射時間を選ぶことが極めて重要である。

 

 


Effects of Na2SO4 or NaCl on sonochemical degradation of phenolic compounds in an aqueous solution under Ar: positive and negative effects induced by the presence of salts

Md. Helal Uddin, Ben Nanzai, Kenji Okitsu

懸滴法*による表面張力の測定      *針先に水滴を作り、水滴のシェープをYoung-Laplaceの式でカーブフィッティングして、表面張力を求める方法

ーUltrason. Sonochem., 28, 144-149 (2016)ー

<概要>

種々の芳香族化合物の超音波分解に及ぼす無機塩(Na2SO4やNaCl)の添加効果について検討した。その結果、分解速度は、クロロフェノール>フェノール>カテコール>レゾルシノールの順であり、この順は化合物の疎水性の順と一致した。芳香族化合物の分解速度は、無機塩を添加しても大きな変化は見られなかった。実験結果を解析した結果、分解速度に及ぼす「正の効果」と「負の効果」が存在していることが明らかとなった。「正の効果」としては、動的表面張力変化の結果から、無機塩を含む水溶液では芳香族化合物は分解反応場であるバブル近傍に速やかに濃縮され、分解が促進されることがわかった。一方、「負の効果」としては、無機塩添加によってアルゴンガス溶解量の低下が起こり、その結果、超音波照射により生成される高温高圧のバブル数が減少したものと考えられた。さらに分解生成物の解析から、バブルの特性が無機塩の添加により変化することが確認された。

 

 

 


One-pot synthesis of gold nanorods via autocatalytic growth of sonochemically formed gold seeds: the effect of irradiation time on the formation of seeds and nanorods

K. Okitsu, Y. Nunota

ーUltrason. Sonochem., 21, 1928-1932 (2014)ー

<概要>

アスペクト比(長軸の長さと短軸の長さの比)の制御された金ナノロッドは、ドラックデリバリーシステムや高密度光記録材料等への応用が期待されている。本研究では、超音波の高温高圧バブルを金イオンの還元反応の場として利用することによって、アスペクト比の制御された金ナノロッドを1ステップで合成する手法を開発することを試みた。本法では従来法で利用される有害還元剤(NaBH4等)が不必要となり、環境にやさしい合成法と位置づけられる。本研究では、超音波照射によって生成される金シード粒子が自己触媒作用によって自発的に金ナノロッドまで粒子成長することが確認された。照射時間が短くなるとアスペクト比が小さくなり粒子サイズが大きくなる傾向が見られた。この理由として、添加されているヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド やAgNO3が金シード粒子表面に十分な量吸着していないことが原因と示唆された。

 

 超音波シード合成法を経て調製される金ナノロッドの電子顕微鏡写真. ※超音波照射時間:a)0.5 b)1 c)3 d)10 分間 (図中の赤字はアスペクト比)

 

 


Sonochemical decomposition of organic acids in aqueous solution: Understanding of molecular behavior during cavitation by the analysis of a heterogeneous reaction kinetics model

K.Okitsu, B. Nanzai, K. Kawasaki, N. Takenaka, H. Bandow

酪酸水溶液のバブル崩壊前(a)と崩壊後(b)の様子                   BA:酪酸 P:生成物

ーUltrason. Sonochem., 16, 155-162 (2009)ー

<概要>

悪臭物質である酪酸の超音波分解処理と分解速度の速度論解析について検討した。これまで有機物の超音波分解に対する速度論解析としては、均一反応速度論を用いて解析されてきたが、本研究では、不均一反応速度論であるLangmuir型速度論を用いて解析を行った。本研究ではバブルの特性、OHラジカル濃度や酪酸濃度がバブル近傍に高濃度に存在することを指摘すると共に、得られた実験結果から、均一反応速度論よりも不均一反応速度論を用いる方が適切であることを提案した。溶液のpHが分解速度に及ぼす影響についても検討した。さらに分解対象物質を酪酸の代わりに安息香酸を用いた時にも、Langmuir型速度論を用いて分解速度を解析することができた。また、酪酸がプロトンを放出したC3H7COOの形態をとっている場合、C3H7COOがバブル表面に捕捉されることで、バブルは負に帯電し、その結果、C3H7COOのバブル表面での吸着量がC3H7COOHの吸着量よりも少ないことが速度論解析によって示唆された。

 

 

 

 


Sonochemical degradation of various monocyclic aromatic compounds: Relation between hydrophobicities of organic compounds and the decomposition rates

B. Nanzai, K. Okitsu, N. Takenaka, H. Bandow, Y. Maeda

Ultrason. Sonochem., 15, 478-483 (2008)

疎水性の高い芳香族化合物(logPが大きい化合物)ほど、分解速度が速い傾向がみられる


<概要>

分解対象物質にニトロベンゼン、アニリン、フェノール、サリチル酸、クロロフェノール、スチレン、クロロベンゼン、トルエン等の計12種類を選び、対象物質の物理化学特性(ヘンリー定数、蒸気圧、溶解度、log P)と分解速度の関係を体系的に調べた。その結果、log Pが分解速度に影響を与える最大因子であることが判明し、疎水性の高い溶質は泡の界面に集まり、そこでOHラジカルによる分解と熱分解が進行していることが明らかになった。

 

 

 

 

 


Acoustic Multi-Bubble Cavitation in Water: A New Aspect of the Effect of Rare Gas Atmosphere on Bubble Temperature and its Relevance to Sonochemistry

K.Okitsu, T. Suzuki, N. Takenaka, H. Bandow, R. Nishimura, Y. Maeda

メチルラジカル再結合反応における反応温度と生成されるエタン、エチレン、アセチレンの量比の関係

ーJ.Phys. Chem. B, 110, 20081-20084 (2006)ー

<概要>

溶液に超音波照射することによって生成される高温高圧のバブルは、様々な化学反応に利用できることが期待されている。バブルの温度を測定している研究例が少ないため、本研究では、種々の希ガスを溶存させた水に高周波数の超音波を照射した時に生成されるバブルの温度を、メチルラジカルの再結合反応を利用する速度論により解析した。種々の溶存ガスの熱伝導度や溶解度を関数として超音波化学反応速度をプロットすることにより、溶存ガスが超音波化学反応に及ぼす影響について評価した。これまで溶存ガスの熱伝導度が高くなるとバブルの温度が低くなるものと考えられてきたが、本研究の結果では、溶液ガスの熱伝導度の影響は小さいことが明らかとなった。さらに、溶存ガスの溶解度が高くなるほど、生成するバブル数が増加し、水の超音波分解が速く進行することが明らかとなった。

 

 


Sonochemical Preparation and Catalytic Behavior of Highly Dispersed Palladium Nanoparticles on Alumina

K.Okitsu, A. Yue, S. Tanabe, H. Matsumoto

ーChem. Mater., 12, 3006-3011 (2000)ー

有機物を含む水溶液に超音波照射した時の活性種の生成と金属イオンの還元

<概要>

水溶液中のPd錯イオン(Pd(II))を超音波還元することにより、Pdナノ粒子担持アルミナ触媒を調製した。Pd(II)の還元速度は添加されているアルコールの種類が変わると変化した。疎水性の高いアルコールほど高温のバブル近傍に高濃度に濃縮されるため、より多くのアルコール分子が熱分解され、その結果、Pd(II)の還元を進行させる還元性有機ラジカルが多く発生されることが示唆された。生成されるPdナノ粒子のサイズはPd(II)還元速度が速くなるほど小さくなった。さらにPdナノ粒子の担持メカニズムを検討したところ、Pd(II)の還元、Pd核生成および成長はバルク溶液中で起こり、その後アルミナ表面に担持されるメカニズムが提案された。1-ヘキセンおよび3-ヘキセンの水素化反応に対する触媒活性について検討した結果、超音波で調製した触媒は、市販のPdブラックや従来法で調製したPdナノ粒子担持アルミナ触媒よりも高活性であることが分かった。